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宗教・ラブホ・法人税

読書

『法人税が分かれば、会社のお金のすべてが分かる』という新書を読みました。



いきなりで恐縮ですが、この本の中で、ラブホテルを経営していた宗教法人に国税局の税務調査が入り、数億円の法人税を追徴したことを伝える新聞記事が紹介されていました。「えっ、宗教法人って法人税払ってるの?」と反応してくれれば著者の作戦は大当たりなのでしょうが、わたしのような下世話な人間は「えっ、宗教法人がラブホテル経営?」という点にすべての意識が集中してしまい、それ以降の部分はうろ覚えになってしまいました。しかし、国税局がこの宗教法人に対して追徴をした理屈が非常に面白かったのでうろ覚えですが紹介したいと思います。


まず、基本的に法人は法人税を納める義務がありますが、いくつか例外が設けられています。ひとつは、公共法人で、これには地方公共団体やNHKなどが含まれます。公共法人は納税義務がありません*1


例外のふたつめが、公益法人で、ここには日本赤十字社、学校法人などが含まれます。そして宗教法人も公益法人に含まれます。公益法人の場合、「本業」には法人税がかかりませんが、「収益事業」に限って法人が課税されると規定されています。例えば、宗教法人が所有する土地でコインパーキングをしていたりすると、それは収益事業ですから課税対象になるそうです。


ちなみに、同じように収益事業に限って法人税が課税される法人に、「人格のない社団」というカテゴリーがあり、PTAなどがここに含まれるそうです。また協同組合等には納税義務がありますが、税率が普通法人に比べて軽減されているそうです。


さて、宗教法人は公益法人というカテゴリーに含められて、公益法人は「収益事業」のみに法人税が課税されるということでした。宗教法人の場合、お賽銭やお布施は収益事業には含まれませんので、法人税はかかりません。ところが、お守りやお札になると微妙で、「その売価と仕入原価との関係からみてその差額が喜捨金と認められる場合」には、収益事業に該当しないものとみなされ課税対象外になるそうなのです。ですから、お守りを販売していて、もしも喜捨金(寄付ですね)とみなせる範囲を超えていると解釈されるような高い値段でお守りを販売した場合には、その販売は収益事業とみなされて、法人税の課税対象になるということになります。逆に言うと、お守りの値段が常識の範囲内なら課税対象外ということになるようです。


さてさて、そこでラブホテルです。姉さん大変です。先ほどの記事に出ていた宗教法人ですが、経営するラブホテルの宿泊料5500円のうち、2000円を喜捨金として受け取り、差額の3500円については収益事業とみなして法人税を納めていたというのです。イエーイ。


ところが、国税局としては「テメーバカヤロー、ラブホテルの利用者が『2000円は喜捨金ね』なんて考えるはずねえだろ」ということで宿泊料全体を収益事業とみなして追徴したようなのです*2。イエーイ。


正直なところ、この宗教法人の「ラブホテルの宿泊料を喜捨金とみなす」というアクロバチックな発想に叩きのめされました。すごい、すごすぎるぞ、日本の宗教! その勢いで世界を獲れ! エースを狙え! 好きを貫け! 嫌ならやめろ! やっぱりやめるな! 飲んだら乗るな! ハイクがんばれ! ツイッターの母ちゃんデベソ! 姉さん大変です。 


話題が話題だけに、やや興奮してしまいました。申し訳ありません。しかし、改めて冷静になってよく考えますと、宗教の本質が愛にあることは指摘するまでもないことですし、ラブホテルの本質もなんとなく愛にあるような気もしないでもないわけですから、ラブホテルの宿泊料全額を喜捨金とみなすほうが妥当であるという解釈にとどまらず、あらゆる宗教法人にラブホテルの運営を義務づけるくらいのことはすべきであるという気もしないでもないのではないでしょうか? わたしはしないけど。ですから*3、この宗教法人の経営するラブホテルに対する課税というのは、たんなる法人税の法解釈の問題にとどまらず、日本社会における現代宗教のあり方にも及ぶ問題であるという気もしないでもないわけでしょうか? わたしはしないけど。姉さん大変です。


さて、話題が話題だけに、かなり脱線してしまいましたが、この『法人税が分かれば、会社のお金のすべてが分かる』という本は、もちろん宗教法人のラブホテル経営だけにフォーカスした本などではなく(当たり前だ)、基本的な税額の算出方法の説明から始まって、たとえば大銀行が数年間も法人税を払っていない理由を非常に分かりやすく説明してくれていますし、それ以外にも受取配当、減価償却、役員給与、交際費などが法人税においてどのように規定されているのかを楽しく学べる工夫がしてあります。法人税のことはよく知らないけれども、概略だけでも学んでみたいという方などに非常によい一冊だと思います。


ちなみに、わたしがこの『法人税が分かれば、会社のお金のすべてが分かる』を読んでみようと思ったのは、『暴走する資本主義』という本のなかで、著者のロバート・ライシュさん(クリントン政権の労働長官)が法人税の廃止を提唱していたからでした。法人税を廃止すべきというその理由がまた非常に面白かったので、後日改めてその点についても書いてみたいなと思っています。


*1:関係ないですが、日本中央競馬会も公共法人に含まれていて個人的には意外でした

*2:「テメーバカヤロー」を含めて想像力を働かせ過ぎた箇所が多数ありますので予めご了承下さい

*3:ですから?