親の私生活をさらけ出して子どもはユーモア詩で爆発する


『笑って伸ばす子どもの力 ユーモア詩が教える子育てのコツ11章』を読んだ。

笑って伸ばす子どもの力―ユーモア詩が教える子育てのコツ11章笑って伸ばす子どもの力―ユーモア詩が教える子育てのコツ11章
増田 修治

主婦の友社
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この本の著者は、2001年に「児童詩教育賞」を受賞された増田修治さんという方です。本のプロフィールには埼玉県の小学校教諭となっていますが、増田先生のウェブサイトを見てみると2008年からは大学の教員として活躍されているようです。

ウェブサイトはこちら→「どんぐり先生(増田修治)のホームページ http://www7b.biglobe.ne.jp/~masuda-home/index.html



ユーモア詩を通じて「親・子ども・教師がつながりあえる学級づくり」を実践されてきた先生のようです。先生のウェブサイトには「ユーモア詩」について次のように説明されています

「ユーモア詩」とは、とにかくくだらなくてもいいから笑える詩を書き、それを読みあう中で心が開かれた学級を作ろうというものです。


この本は、その実践の中で実際に子供たちが書いた詩が紹介されています。またそうした詩を通じて育児のコツのようなものがまとめられています。読み物としてもちろん面白いですし、育児についてのあるある感が満載で共感できる部分や胸にぐさぐさ突き刺さる部分が多く色々と考えるきっかけとなる本でした。


例えば第三章は「お父さん、お母さんの口ぐせを考える」というタイトルなんですが、そこでは親の口ぐせを子供たちにアンケート形式で聞いた結果が紹介されています。一番多かったのはなんだったと思いますか? 


一位は「早く○○しなさい!」だったそうです。もちろん本当にそのまま「早くまるまるしなさい!」って全国のお父さんとお母さんが言ってるわけではなくて、この「○○」の中にいろんな言葉が入るわけですよ、しっかりしてください。


この「早く○○しなさい!」に関して小学校4年生の作文が紹介されていました(ユーモア詩として書かれたものなのか、「通常」の作文として書かれたものなのかは明記されていなかったので分かりません)。

 お母さんの口ぐせは、「早くしなさい!」です。私が何かしようとすると、「早くしなさい!」と言うのです。「早く起きなさい!」「早く宿題しなさい!」「早くごはんを食べなさい!」「早く着替えなさい!」と次々言います。お母さんは、「早く」という言葉をつけないと何も言えないようです。


この「早く早く攻撃」は身に覚えがありまくり過ぎて鼻血が出そうになりました。「早く早く」ってウサイン・ボルトでもあるまいになんの限界に挑戦させるつもりやと思いつつ、イライラしている時は自分でも歯止めがきかなくなり、他方で何度も何度も同じ事を言われた子供の方も意固地になってしまって、悪魔のサイクルに突入するわけですが、こうなるとなかなか抜け出せなくなり「ウキー!キュオー!ギャギャー!しsうぃえchりkw!」などと類人猿の示威行動のようななにかが朝の食卓で展開されることになります。ああなるさ。なるともさ。


本書では「待つことの大切さ」と題された節があって、この「早く早く」を見直すことをきっかけにして子どもとの関係を見つめ直すための方法が提案がされていてなるほどなと思ったので感心のある方は是非読んでみてください。


また先ほども述べたようにここで紹介されているユーモア詩はどれも本当に面白いです。例えば小学校四年生の女の子の「カミナリと弟」と題された詩がありました。

カミナリが鳴った。
そしたら弟がわざとらしく
「ウオー!」と言った。
私が、
「あんた、なにやってんの」と言っても
「ウオー!」と言った。
「あんたバカ?」と言っても
「ウオー!」


私の弟は
本当にバカなのだろうか?
心配になってくる


しかし本当に弟ってどうしてこう馬鹿なんですかね。姉を持つ弟の87%は馬鹿という統計データがあったら嘘でもブックマークしたいくらいです。この本の趣旨ともこの記事のとも関係ないですが、どなたかにこの謎を是非解明していただきたいと思います。


さて、ここで紹介したような詩も、最初は「弟のことをこんな風に書いてしまって大丈夫かな?」となってしまいそうですが、そのあたりは先生や親との信頼関係の中で「先生このあたりでどないでっしゃろ、エヘヘ?」とか色々と徐々に学んでいくのでしょうか。


こうしてある程度の「悪」の部分も笑いに変えて表現できるという点もユーモア詩の良い所なのかもしれません。やんちゃな子にとっては普段怒られているようなことが笑いに変わることで褒められたりすることもあるでしょうし、また普段は自分の気持ちを抑えがちな子にとっても少しずつ自分の気持ちを開放していくきっかけになるような気がします。どこまでを許容するのかというのは赤ペン先生ではなかなか難しいでしょうから、やはり普段から接触のある親や先生の腕の見せ所になるんでしょうか。


ここで紹介した以外の詩も、腹を抱えて笑えるものもあれば、ちょっとホロっとするような感動的なものまで本当に多様で面白いです。興味のある方は是非一度読んでみてください。






ちなみに、この本を読んでいたら、R・D・レインの『こどもとの会話』を思い出したので、書棚から引っ張りだしてみた。読み返してみるとやはり面白かったのでこれはまた改めて紹介してみたいと思います。

子どもとの会話 (1979年)子どもとの会話 (1979年)
R.D.レイン,弥永 信美

海鳴社
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