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テーマをハグして、中身で喧嘩して、最後に喧嘩をハグする(イトイ式対話術?)

ほぼ日(ほぼ日刊イトイ新聞)で、TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ社長の増田宗昭さんと糸井重里さんとの対談『カフェの視線』というのが掲載されていました。この対談は、「2011年の初夏、代官山に完成する予定の大きな商業施設の構想」をめぐっておふたりで「雑談」したものをまとめたものだそうです。


カフェの視線ーほぼ日刊イトイ新聞


対談の中身もとても刺激的だったのですが、糸井さんの話の進め方がとても面白いと思ったのでそれについて書いておきたいと思いました。


どういう点が面白かったか簡単に言うと、糸井さんは話の途中で「ポジティブな予言」を挿むのです。それによって対談相手(今回の場合だと増田さん)の話し振りがどんどんノリノリになっていく感じがするのです。


具体的に見てみます。この対談は4回に分けて掲載されていますが、その第2回目の「編集権とイニシアチブ」でのやりとりです。

増田 なぜ、人々はユニクロに行くのか。レンタルCDショップがどうしてこんなに、広まったのか。それは「値段が安いからだよ」ってみんな言うんだけどそうじゃないと、ぼくは思うんです。


糸井 ほう。


増田 安いからというのも当然あるとは思うけど、もっと根本的には「お客さんの側の変化」があると思ってる。


糸井 たぶん、その話はおもしろいですね。


「たぶん、その話はおもしろいですね。」と「予言」しています。話している方からすると、「キーワード」を言っただけで喰いついてくれてるわけで、おそらく気分がいいでしょう。そうなると「いつもより多めに回しております」状態に入ると思います*1


ただ、この「予言」というのは、話し相手を乗せて気分よく話をさせるテクニックのひとつと見ればそれほど珍しい技法ではないのかもしれません。ですが、この後の展開がまた「巧妙」なのです。


この後の部分で、増田さんが「編集権の移動」というキーワードで今の時代を分析します。詳しくはほぼ日のページで読んで頂きたいと思いますが、ごく簡単に言うと、増田さんは、昔は商品を制作ないし提供する側が「編集権」を握っていたのに対して、今の時代はお客の側が「編集権」を握っている、と主張します。


ところが、糸井さんは、この「編集権の移動」というのは一部の限られた層に当てはまることであって、ふつうの「大衆」について言えば当てはまらないと反駁するのです。そして「イニシアチブの移動」というキーワードで自説を展開します。


つまり、最初に「たぶん、その話はおもしろいですね。」と乗っておいて話を引き出した後、それは違うと言いだしているわけです。そしてここからがまたポイントだと思うのですが、次に示す部分は、糸井さんが増田さんとは異なる見解(話の中身はほぼ日のページで確認してください)を提示した後のやりとりです。

増田 へぇー‥‥。「お客さんのほうが、わかってる」って部分はいっしょなんですけどね。


糸井 そう、だから、ぼくと増田さんのちがいは、もうちょっと喋ったら、きっと、おもしろいでしょうね、たぶん。


「もうちょっと喋ったら、きっと、おもしろいでしょうね、たぶん。」ここでもまた予言です。今度のは、いったん両者の見解の相違が露呈したけど、その違いを探るときっと面白いですよね、という予言です。




テーマにハグして、中身で喧嘩して、最後に喧嘩をハグする

こういうのは実際の場面では簡単に真似できるわけではないので、まとめる意味はあまりないのかもしれませんが、一応強引にまとめてみると、この記事のタイトルのようになるのかなと思います。


この対談で、糸井さんはまず、対談相手である増田さんが提示するテーマに喰いつういて「ハグ」します。これが最初の「たぶん、その話はおもしろいですね。」です。そして相手を乗せておいて話を引き出します。ところが、その後の核論では相手と異なる見解を提示して「喧嘩」します。ただ単に相手の話を全肯定して気持ちよくさせるという方式ではないわけです。こうしていったん相手との違いを浮き彫りにするわけですが、今後はその違いこそが面白いんだと言って、違うことを楽しみもうとします。これが2つ目の予言「もうちょっと喋ったら、きっと、おもしろいでしょうね、たぶん。」です。


「生産的なやりとり」というのはやり方は色々だと思うのですが、上で示した構造というのは割と普遍的なのかなとも思います。全肯定と全否定との間にしか解はないので。とか言うと、点数を多く取ったチームが勝ちですから、みたいなことを言うサッカー解説者みたいでなんなんですけど。なんなんですけどってなんなんですかね。


この対談では、糸井さんが挿む「ポジティブなプチ予言」がこの構造を導く役目を果たしているというのが特徴なのかなと思いました。話をきいてから「面白かった」と言うのではなくて、「それは楽しいことだよね」というシグナルを最初に提示しているわけですよね。たぶん、相手との信頼関係あってこそという面も大きいと思いますが。


なんの話かよく分からなくなってきましたが、ちょっと思ったので書いてみますた。



最後に。増田さんがこの「代官山プロジェクト」のコンセプトや経緯を語っている本があるそうです。これ↓。



「今回の糸井重里とのお話を別角度から編集した対談をはじめ、ゲームクリエイター飯野賢治さんや建物の設計を手がけたクライン・ダイサム・アーキテクツと増田さんとの対談も収録されてます。」とのことです。

*1:多分